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ギュスターヴ・モロー 未完のようなサロメ そしてエボーシュ

サロメと斬首される聖ヨハネ ギュスターヴ・モロー

サロメの衣装で、モローの雰囲気がでているが、全体の作品像として未完、あるいはエチュード(習作)のような作品である。上の間を大きくとり、人物像をあえて小さく描き、独特の戦慄を覚えてしまう。

さて、下に並んだ作品は、左が「サロメ」である。ギュスターヴ・モローのサロメだ。ヘロデ王の前で踊るサロメと同じように、二柱の間にヘロデ王がいる。

半具象的な抽象画に近い描き方で、未完のようでもある。この左側の「サロメ」的な描き方の作品に、モローは、タイトルにエボーシュとつけ加えている。エボーシュは、下絵や粗略画をさす。だが、この「サロメ」は、「エボーシュ サロメ」というタイトルではない。もちろんエチュードでもない。

左はモローの「エボーシュ」という作品である。下描きとしてのエボーシュ、下絵としてのエボーシュ、粗略画としてのエボーシュ、そして[url=http://remove.jugem.jp/?cid=46]抽象画[/url]としてのエボーシュを、「エボーシュ」としてタイトルづけするものと、タイトルにエボーシュを付け加えるものとを、それぞれのエボーシュの主題にそって、命名していたのではないだろうか。



モローのエボーシュは、つまるところ、具体的な要素が形成されていないということだ。

作品のサロメは、まるで「エボーシュ」のように、曖昧な形態の愛。サロメに登場するそれぞれの人物も、曖昧な愛から、歪んだ不純の室を生み、育ち、破滅する。

1876年にサロン出品となった「出現」は、斬首されたヨハネの首の幻影が、サロメを脅かす作品である。

隠岐由紀子女史の解説によると、「出現」(油彩)において、モローは未完成の効果を狙ったとある。線描と色彩を剥離し、さらに線描のみのモチーフは、未完成な魅力があるという。僕も未完ながら、独立した作品と感じてしまう。

さらに隠岐由紀子女史は、象徴派デカダンスのバイブル書である、ジョリ・カルル・ユイスマン作(澁澤龍彦 訳) 「Against the Grain (a Rebours) さかしま」から、「出現」(水彩)に関する次の一節を引用している。

「いかなる時代にも、水彩画がこれほど絢爛たる華やかさに達したことはない。(略)織物や肉体の豪奢をこれほど奇跡的にかつ眩惑的に誇示したこともない。」

「(略)腿には巨大な瓔珞がまといつき、石榴石やエメラルドを川のように引きずっている。最後に、胸当てと帯のあいだに見える素肌の腹は、臍のくぼみを刻んで大きく張り出している。臍の孔は、乳色と薔薇色の縞瑪瑙を彫り刻んだ小さな印章のようだ」
「さかしま」のアーサー・ツァイデンバーグの挿絵も、デカダンスを感じさせるアールデコ調で、主人公デ・ゼッサントの嗜好を象徴している。隠遁生活を回顧する物語だが、ある日、モローのサロメをみて、「正真正銘の女。火のように激しい残酷な女の気質そのものに従う。涜聖の臥床に芽生え、不純の室に育ち、男の意思をいっそう確実に魅惑し馴致するのである」と慄く。サロメもデ・ゼッサントも、性倒錯を象徴する、烈しいヒロイン、無力なヒーローかもしれない。

モロー曰く「軽やかで不吉な小鳥のような永遠の女性」としているではないか。淫蕩の化身なのである。サロメという女は。男を破滅させるファム・ファタルだが、自分自身も破滅してしまうのだ。

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「サロメの舞踏」年代不詳 モロー美術館
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コメント(0)| Track back(0) | 2007-02-27

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